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健康・子育て解決部屋
子どもの体・健康Q&A

今月は国立病院機構富山病院院長 嶋大二郎先生のコラムを紹介します

「インフルエンザ、ノロ、RS  話題のウイルス」

 

 多様な微生物でも、なじみ深い名は細菌とウイルス。感染症の原因として多いことを物語るし、子どもの急病の主役はほぼこの両者です。

 二つの事実を押さえましょう。

1)小児の急病は、細菌より圧倒的にウイルス感染症が多い

2)細菌を殺す武器(=抗生物質)はふんだんにあるが、ウイルスを殺して人には無害という都合のよい武器はない

 1)、2)、一方の事実が逆ならいいのに!

 

 登園・登校許可のいる疾患には、インフルエンザ(以下、「インフル」)、はしか、風疹、おたふくかぜ、水痘、アデノウイルス感染症、感染性胃腸炎、溶連菌感染症手足口病、りんご病、マイコプラズマ肺炎などが並びます。うち、薬(抗生物質)で治せるのは細菌感染症(下線)の二つのみ。あとはウイルス感染で、自然治癒が原則です。インフルと水痘は薬で爆発的増殖を抑え軽症化できますが、ウイルスは生きており治したわけではありません。幸い、どれも数日で自然に治る病気であり薬は必須ではない、というよりも効きません。抗生物質で殺菌し、治せる細菌感染とは全く違う世界です。

 

 これらを材料に、最近話題の「インフル」「ノロ」「RS」の三疾患を考えます。

 インフルは説明不要。また、嘔吐中心の症状を引き起こし、食物や吐物を介して極めて伝染しやすいノロウイルスも、周知の病気です。そして、RSウイルス。「RS」は呼吸器の細胞を壊すという意味ですから、基本は風邪症状ですが、もともと気道が狭い乳児においては気道表面の損傷が激しいと呼吸困難が強まり、時には危険な病気です。幼児や大人が感染しても、普通は「咳の多い風邪」で終わります。

 三つとも、ウイルス感染症。治す薬のない病気ばかりです。

でも悲観することはありません。例えば世界を恐怖に陥れているエボラ出血熱は、ウイルス故に、殺す薬がありません。時さえ稼げれば免疫で治るはずですが、その前にウイルスの強烈さと合併症で死亡しやすい。だから脅威なのです。

他方、挙げた三疾患に限らず、現在日本の子どもに流行るウイルス感染症は、一般に重篤でなく自然治癒する病気ばかりです。はしか、風疹、ポリオなど危険性の高いウイルスは、ワクチンで既にほぼ阻止されています。もちろん、安全圏にいるのは接種をちゃんと受けた子だけですよ。

 

以上を元に三者への対策を考えてみましょう。流れは次のようになります。

  病原体が外界から侵入し、気道や消化器粘膜に付着する。(感染)

  病原体が細胞内に侵入、増殖を始める。(潜伏期)

  ある数まで増えると、ウイルス毎に特徴ある症状が出始める。(発病)

  人体は「やられっ放し」に甘んじず、②の頃から免疫を作り病原体に対抗し始める

  免疫が病原体を上回ると終息に向かう。(自然治癒) 

ただ、まれに③④周辺で深刻な合併症が起きる。(インフルに伴う脳症は有名)

 

 ウイルスは殺せないから、②以降なら、もはや免疫頼みの段階。自然治癒に待つのみ。

タミフルなど抗インフル薬は有名ですが、ウイルスは生き続けます。一刻も早く薬を使いたい人が殺到して急患センターは大混雑。しかし、薬で見かけの症状は消えても登園・登校は早まらず、何より重要なのは、脳症など重症化への予防にはならないことです。発病後の薬は必須でなく、重症化回避に有用なのはワクチン接種のみとされています。

 これらの病気で医師が出す処方は、抗インフル薬を除けば、あとは解熱剤・鎮咳剤・抗ヒスタミン剤・鎮吐剤など、対症療法のみ。「自然治癒を待つ」姿勢です。

 

 では、どうすればよいというのか。私は、重要なのは二つと考えます

まず①が重要なポイント。余りにも当たり前ですが、ウイルスをもらわないことです。

そう言われても困りますよね。人間が社会生活を営む以上、他人との接触を避けられません。買い物も必要ですが、不要不急の人混みへの外出は最小限にすべきです。

マスクやうがい、手洗いが口うるさく説かれます。しかし、極めて小さく軽いウイルス相手に、実は不完全な予防法です。でも、飛来して取り付く敵を阻止するには他に手段もなく、基本として大切にすべき策なのです。

 二番目に、感染しても発病の確率を減らし、発病しても合併症や伝染の広がりを抑える手段として、可能なワクチンは受けておくこと。残念ながら、ノロウイルスワクチンはまだ研究段階です。RSウイルスもワクチンはなく、出来合いの免疫を注射で与える方法はありますが、早産児や基礎疾患を持つなど特別な乳児にしか認められません。これに対してインフルのワクチンは、誰でも受けられます。発熱にうろたえ走り回る以前に、まず受けておくべきものなのです。

 それでも不幸にして罹ってしまったら‥‥対症療法で自然治癒を待つしかないが、経過中、意識障害や呼吸困難など、急に悪化したと感じた場合は速やかに医師に助けを求める

これに尽きるのだと思います。

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